はじめに(1つのAIに依存しない)

AIに分析を手伝ってもらうとき、つい「いちばん賢いやつ1個」に全部任せたくなります。でも実際に中小ECのデータを毎日触っていると、それが意外と落とし穴になることに気づきます。

なぜかというと、同じモデルに「作らせて」「確かめさせる」と、間違いをそのまま見逃しやすいからです。SQLを書いたモデル自身に「このSQL合ってますか?」と聞いても、自分の書いたものに引っ張られて「合っています」と答えがちです。人間でも、自分が書いた文章の誤字に気づきにくいのと同じ理屈ですね。

そこで私が普段やっているのが、Claude Code と Gemini CLI を役割分担で併用するやり方です。片方に作らせて、もう片方に別の角度から見てもらう。これだけで、ひとりで抱えていた「思い込みのミス」がかなり減ります。

この記事では、2つのCLIツールをどう分担させて、どう回しているのかを、中小ECの分析業務を例に具体的にまとめます。

💡 補足

Claude Code は Anthropic のターミナル向けコーディング支援ツール、Gemini CLI は Google のコマンドライン向けAIツールです。どちらもターミナル上でAIに作業を頼める点が共通していて、併用しやすい組み合わせです。ツールの機能・対応モデル・料金は更新が速いので、導入前に各社の最新公式情報を必ずご確認ください

なお「そもそもどのモデルがどんなタスクに向いているか」という根っこの比較は、別記事のChatGPT・Claude・Geminiのデータ分析能力を実データで徹底比較したにまとめています。あわせて読むと、なぜこの2つを組み合わせるのかが腹落ちすると思います。

なぜ「併用」なのか

1つのAIに任せきりにしないメリットは、ざっくり3つあります。

  • チェックの独立性:作った本人とは別の視点が入るので、論理の穴や思い込みに気づきやすい。
  • 得意分野の使い分け:コードを書く・直す作業と、要約する・別解を出す作業で、相性のいいツールを選べる。
  • コストと速度の最適化:重い実装は片方に任せ、軽い確認はもう片方でサッと回す、といった配分ができる。

逆に、併用には「2つのツールを行き来する手間」というデメリットもあります。なので何でもかんでも両方に通すのではなく、間違えると痛いところだけ二重チェックするくらいの温度感がちょうどいいです。

もう少し噛み砕くと、併用が効くのは「正解が一意に決まりにくい仕事」です。たとえば「このSQLは構文として動くか」はテストすれば一発でわかりますが、「この集計の切り口は妥当か」「この数字の落ち込みをどう解釈すべきか」は、人によって・モデルによって答えが揺れます。こういう揺れる部分こそ、別の頭を1つ足すと安定するわけです。

逆に言うと、答えが機械的に決まる作業(フォーマット変換、決まりきった集計の繰り返しなど)にわざわざ2つ通すのは、ただの二度手間になりがちです。併用は万能薬ではなく、「判断が混ざる場所に効く道具」だと割り切っておくと、運用が軽くなります。

役割分担の基本方針

私の使い分けは、おおむね次のように固定しています。

作業主に使うツール理由
SQLやスクリプトの生成・実装Claude Codeファイル編集やコマンド実行まで一気通貫でやりやすい
出力の検証・別視点でのレビューGemini CLI作った本人とは別の頭で見てもらえる
長文ログ・結果の要約Gemini CLI大きめの入力をまとめる用途に回しやすい
修正の反映Claude Code指摘を受けてそのままコードに反映できる

ポイントは、**「生成・実装は Claude Code、別視点での検証や要約は Gemini CLI」**という大枠を決めておくことです。毎回どっちを使うか迷わなくなるので、頭のリソースを分析そのものに集中できます。

Claude Code 側の役割

Claude Code には、手を動かす作業を任せます。たとえば「先月の商品カテゴリ別リピート率を出すSQLを書いて、実行して、結果を保存して」といった、生成から実装・実行までを続けてやってもらう使い方です。ファイルを触れるのが強みなので、分析スクリプトの作成や修正に向いています。

Gemini CLI 側の役割

Gemini CLI には、Claude Code が作ったものを「別の頭」で見てもらう役割を持たせます。SQLのロジックに穴がないか、集計の前提がおかしくないか、出てきた数字の解釈が妥当か。作った本人ではないので、忖度なしの指摘が返ってきやすいです。長いログや結果セットの要約も、こちら側に寄せています。

実際の回し方の例

中小ECでよくある「先月の売上が落ちた原因を知りたい」というお題を例に、実際の流れを追ってみます。

ステップ1:Claude Code に分析SQLを作らせる

まず Claude Code に、仮説出しとSQL生成・実行を頼みます。

claude "GA4とBigQueryの注文データを使って、
先月の売上が前月比で落ちた要因を、
カテゴリ別・新規/リピート別に分解するSQLを書いて実行して"

ここで Claude Code は、テーブル定義を踏まえてSQLを組み立て、実行し、結果をまとめてくれます。BigQuery と Claude Code をつなぐ具体的なやり方は、MCPでBigQueryとClaude Codeをつなぎ社内分析を回すで解説しているので、環境づくりはそちらを参考にしてください。

ステップ2:出力を Gemini CLI で検証する

次に、Claude Code が出したSQLと結果を、そのまま Gemini CLI に渡してレビューしてもらいます。

gemini "以下のSQLと集計結果をレビューして。
集計ロジックの誤り・前提の漏れ・数字の解釈ミスがないか、
別の見方ができないかを指摘して。
--- SQL ---
(Claude Codeが出力したSQLを貼る)
--- 結果 ---
(集計結果を貼る)"

ここで「リピート判定の期間が短すぎないか」「セール期間の影響を分けていない」といった指摘が出てくることがあります。作った側とは別のツールだからこそ拾える視点です。

ステップ3:指摘を Claude Code に戻して直す

Gemini CLI の指摘が妥当なら、それを Claude Code に渡して修正させます。

claude "次の指摘を踏まえてSQLを直して再実行して:
・リピート判定を90日に変更
・セール期間(先月15〜18日)を除外したケースも併記"

この「作る → 別の頭で見る → 直す」の往復を1〜2周回すだけで、ひとりで黙々と書いていたときより、明らかに筋のいい結果に落ち着きます。

コピペの手間を減らす小ワザ

毎回SQLや結果を手で貼り付けるのは地味に面倒です。Claude Code に出力をファイルへ保存させておけば、そのファイルを Gemini CLI の入力に回すだけで済みます。

# Claude Code 側で結果をファイルに残しておく
claude "上のSQLと結果を analysis_result.md に保存して"

# Gemini CLI 側はそのファイルを読ませてレビューさせる
gemini "analysis_result.md の内容をレビューして。
集計ロジックの誤りや別の見方を指摘して"

ファイルを介すと、長いSQLや大きな結果セットでも貼り間違いが起きにくくなります。なお各ツールのファイル読み込みの指定方法は変わることがあるので、最新の公式ドキュメントで確認してください。

💡 補足

毎回フルで往復させる必要はありません。経営会議に出す数字や、施策判断の根拠になる集計など、間違えると影響が大きいものだけ二重チェックに回すのが現実的です。日々の様子見クエリは Claude Code 単体で十分なことが多いです。

出力は必ず検算する

ここがいちばん大事なところです。2つのAIを併用しても、出てきた数字を鵜呑みにしてはいけません。

⚠️ 注意

AI同士でレビューさせても、両方が同じ勘違いをすることはあります。「2つ通したから安心」ではなく、最後は人間が検算するのが大原則です。特に金額・件数・比率の3つは、必ず別の手段で裏を取ってください。

具体的には、最低限このあたりを手で確かめます。

  • 合計の一致:カテゴリ別に分解した売上を足し戻して、全体の売上と合うか。
  • 件数の桁感:注文件数や顧客数が、日頃の感覚とかけ離れていないか。
  • 期間の境界:「先月」の定義(月初〜月末、タイムゾーン)がズレていないか。
  • 重複・欠損:JOINで行が増殖していないか、NULLが意図せず落ちていないか。

検算は、たとえば管理画面の集計値や、別のシンプルなクエリと突き合わせるだけでも十分です。AIに「この数字が正しい根拠を別の方法で示して」と頼むより、人間が1か所だけ手で確かめるほうが、結局は速くて確実なことが多いです。

💡 補足

検算で食い違いが出たときは、どちらのAIが正しいかを当てにいくより、「なぜ食い違ったのか」を1つずつ潰すほうが早いです。たいていは期間定義かJOINの粒度のどちらかが原因です。

まとめ

Claude Code と Gemini CLI の併用を、最後に整理しておきます。

  • 1つのAIに依存しない:作る本人と確かめる人を分けると、思い込みのミスが減る。
  • 役割を固定する:生成・実装は Claude Code、別視点の検証や要約は Gemini CLI。毎回迷わない。
  • 二重チェックは要所だけ:判断に効く数字だけ往復させ、日常クエリは片方で軽く回す。
  • 最後は人間が検算する:金額・件数・比率は、必ず別の手段で裏を取る。

AIを増やすほど賢くなる、という話ではありません。それぞれに違う役割を与えて、人間が最終チェックを握る。この形にすると、中小ECの分析でも安心してスピードを出せます。まずは「いつもの集計を、もう片方のツールに一度だけ見てもらう」ところから試してみてください。

ツールの仕様・料金は変化が速いので、導入時は各社の最新公式情報をご確認のうえ、ご自身の環境に合わせて調整していただければと思います。