はじめに
「広告レポートを毎回手動でExcelに落として、ROAS・CPAを計算している」という作業を続けていないでしょうか。
Looker Studioの「計算フィールド」機能を使えば、ROAS(広告費用対効果)やCPA(顧客獲得単価)をダッシュボード上で自動計算できます。一度設定すれば、日付フィルタを変えるだけで任意の期間のROAS・CPAが即座に表示されます。
この記事では、Looker Studioでの計算フィールドの作成方法と、広告指標の設定パターンを実践的に解説します。
計算フィールドとは
計算フィールドは、Looker Studio上でデータソースのフィールドを組み合わせて新しい指標やディメンションを作る機能です。SQLを書かずに、関数と演算子で計算式を定義できます。
計算フィールドの作成場所
計算フィールドは2つの場所で作成できます。
| 作成場所 | スコープ | 用途 |
|---|---|---|
| データソースレベル | そのデータソースを使うすべてのレポートで利用可能 | 共通で使う指標(ROAS、CPAなど) |
| グラフレベル | そのグラフ内のみ | 特定のグラフでだけ使う一時的な計算 |
広告指標のようにレポート全体で使うものは、データソースレベルで作成するのが効率的です。
ROAS(広告費用対効果)の計算フィールド
ROASの定義
ROAS = 売上(収益) ÷ 広告費用
ROASが3.0であれば、広告費1円あたり3円の売上があるという意味です。
Looker Studioでの設定手順
- 「リソース」→「追加済みのデータソースの管理」
- 対象データソースの「編集」をクリック
- 「フィールドを追加」をクリック
- 以下の内容を入力
フィールド名: ROAS
計算式: SUM(revenue) / SUM(ad_cost)
データ型: 数値
💡 補足
ゼロ除算を防ぐために、
CASE WHEN SUM(ad_cost) > 0 THEN SUM(revenue) / SUM(ad_cost) ELSE 0 ENDとするのが安全です。もしくはBigQueryのビュー側でSAFE_DIVIDEを使う方法もあります。
BigQueryでROASを事前計算する方法
データソースがBigQueryの場合、SQL側で計算しておくこともできます。
SELECT
date,
campaign_name,
SUM(revenue) AS revenue,
SUM(ad_cost) AS ad_cost,
SAFE_DIVIDE(SUM(revenue), SUM(ad_cost)) AS roas
FROM
`project.dataset.campaign_performance`
GROUP BY
date, campaign_name
SQL側で計算する利点は、SAFE_DIVIDEによるゼロ除算対策が組み込める点と、集計ロジックをSQLに一元管理できる点です。
CPA(顧客獲得単価)の計算フィールド
CPAの定義
CPA = 広告費用 ÷ コンバージョン数
CPAが5,000円であれば、1件のコンバージョンを獲得するのに5,000円の広告費がかかっているという意味です。
Looker Studioでの設定
フィールド名: CPA
計算式: CASE WHEN SUM(conversions) > 0 THEN SUM(ad_cost) / SUM(conversions) ELSE 0 END
データ型: 通貨(JPY)
その他の広告指標の計算フィールド
CTR(クリック率)
フィールド名: CTR
計算式: SUM(clicks) / SUM(impressions)
データ型: パーセント
CVR(コンバージョン率)
フィールド名: CVR
計算式: SUM(conversions) / SUM(clicks)
データ型: パーセント
CPC(クリック単価)
フィールド名: CPC
計算式: SUM(ad_cost) / SUM(clicks)
データ型: 通貨(JPY)
CPM(インプレッション単価)
フィールド名: CPM
計算式: (SUM(ad_cost) / SUM(impressions)) * 1000
データ型: 通貨(JPY)
条件付き書式でアラートを設定する
計算フィールドを作成したら、条件付き書式を使って基準値を下回った(上回った)場合に色でアラートを表示できます。
スコアカードの条件付き書式
- ROASのスコアカードを選択
- 「スタイル」タブを開く
- 「条件付き書式」→「追加」をクリック
- ルールを設定
ルール1: 値 >= 3.0 → 背景色: 緑
ルール2: 値 >= 1.0 かつ < 3.0 → 背景色: 黄
ルール3: 値 < 1.0 → 背景色: 赤
ROASが1.0を下回ると赤字(広告費>売上)なので、赤で表示すると経営者が即座に気づけます。
テーブルの条件付き書式
テーブル形式でキャンペーン別のROAS・CPAを表示する場合も、同様の条件付き書式が使えます。
- テーブルのグラフを選択
- 「スタイル」→ 指標の列で「条件付き書式」を開く
- ヒートマップ形式またはルールベースで設定
ダッシュボード構成例: 広告パフォーマンスレポート
以下の構成で広告パフォーマンスのダッシュボードを作ると、経営判断に直結する情報が一画面にまとまります。
上段: KPIスコアカード
| ROAS | CPA | 広告費 | 売上 | CVR |
|---|---|---|---|---|
| 条件付き書式で色分け | 目標値との比較 | 期間合計 | 期間合計 | 期間平均 |
中段: 時系列トレンド
- X軸: 日付
- 左Y軸: 広告費用(棒グラフ)、売上(棒グラフ)
- 右Y軸: ROAS(折れ線グラフ)
下段: キャンペーン別テーブル
| キャンペーン名 | 費用 | 売上 | ROAS | CPA | CTR | CVR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| キャンペーンA | ¥100,000 | ¥350,000 | 3.5 | ¥2,500 | 2.1% | 3.5% |
| キャンペーンB | ¥80,000 | ¥120,000 | 1.5 | ¥8,000 | 1.2% | 1.0% |
ROASの列にはヒートマップ形式の条件付き書式を設定し、パフォーマンスの良し悪しを視覚化します。
BigQueryで統合広告テーブルを作るSQL
Google広告とMeta広告など、複数の広告プラットフォームのデータを1つのテーブルにまとめると、横断的な分析が可能になります。
CREATE OR REPLACE VIEW `project.dataset.unified_ads_performance` AS
-- Google Ads
SELECT
segments_date AS date,
'Google Ads' AS platform,
campaign_name,
SUM(metrics_cost_micros / 1000000) AS ad_cost,
SUM(metrics_clicks) AS clicks,
SUM(metrics_impressions) AS impressions,
SUM(metrics_conversions) AS conversions,
SUM(metrics_conversions_value) AS conversion_value
FROM
`project.dataset.p_CampaignStats_XXXXXXX`
GROUP BY date, campaign_name
UNION ALL
-- Meta Ads(別途BigQueryに連携済みの想定)
SELECT
date,
'Meta Ads' AS platform,
campaign_name,
SUM(spend) AS ad_cost,
SUM(clicks) AS clicks,
SUM(impressions) AS impressions,
SUM(purchases) AS conversions,
SUM(purchase_value) AS conversion_value
FROM
`project.dataset.meta_ads_daily`
GROUP BY date, campaign_name
このビューをLooker Studioに接続し、platform ディメンションでフィルタすれば、プラットフォーム別・横断の両方の分析ができます。
よくある問題と対処法
計算フィールドで「集計できません」エラーが出る
計算式の中で集計関数(SUM、COUNTなど)を使っていない場合に発生します。計算フィールドでは、指標同士の演算には明示的にSUMやCOUNTを使ってください。
フィルタ適用時にROASがおかしな値になる
フィルタで期間を絞ったときに、ROASが異常に高い値や低い値になる場合は、分母(広告費)がゼロに近い期間が含まれている可能性があります。ゼロ除算対策のCASE文を入れてください。
通貨の表示形式がずれる
計算フィールドのデータ型を「通貨(JPY)」に設定しているか確認してください。また、グラフの「スタイル」タブで桁区切りや小数点以下の表示を調整できます。
まとめ
Looker Studioの計算フィールドを活用すれば、ROAS・CPA・CTR・CVRといった広告指標を自動で計算・表示できます。
- 計算フィールド: データソースレベルで作成し、レポート全体で再利用
- 条件付き書式: 基準値を下回ったら赤表示で即座に気づける
- BigQueryとの連携: 複数プラットフォームのデータを統合し、横断分析を実現
手動レポート作成の工数を削減しつつ、リアルタイムで広告パフォーマンスを監視できる環境を構築してみてください。